店主の栂(とが)さんも、ギャラリーを運営する栂さんのお母さま、哲子さんも「ものを見る目」が研ぎ澄まされていて、一つ一つの言葉が、ぜったいに自分には出てこない感性の塊なのです。
味覚だけではない、深い味わい
ギャラリーの展示品を手にとって眺めたあと、にしん蕎麦を注文すると
蕎麦が絹の着物のように折り畳まれて出てきました。
上に乗ってキラキラと輝くにしんが、櫛(髪をとくあのクシ)のように見えました。
お食事の器は、ギャラリーに出店した方のものを使っているとのこと。
作家さんが作った器で、料理がいただけるという贅沢です。
路面が凍結するような寒い日でしたが、フロアにある薪ストーブが足元をぬくめ、さらに豊かな気持ちにさせてくれました。
どこ行ってもいっしょ。自分次第。 〜ギャラリー 栂〜
哲子さんは、ギャラリーを毎月開催しています。
その日もインタビュー中、間を置かずさまざまな人が訪れていました。
取材日に展示されていたのは、和紙の作品中心でした。
カメラもライフワークの一つのご様子で、慣れた手つきで窓の外の風景を撮っていました。
ギャラリーのHPやブログ更新もご自身でされており、FBも日頃よりマメに更新されています。
SNSの勉強会にもよく参加されている勤勉な頭脳派デザイナーさんです。
私が、「和気に来て本当によかった、すてきな町」というようなことを述べると、
哲子さんは「そうなんですね。それは良かった。でもどこに行っても一緒なのかもしれませんよ。結局は自分の心の持ち方次第。」と返答。
自分次第。言われてたしかにそう思います。
和気に行きたい、行ってみた、と行動した時点でもしかしたら、
もう自分にとってすでに半分以上「すてきな町」になっているのかもしれません。
また、こちらは和気町と備前市の境になる和気町清水という場所にあるのですが、
哲子さんはこうもおっしゃっていました。
「地域の関わり方ってその土地その土地で色々あります。
私らはここ(清水)には店舗のみ。家は備前です。
和気にもつかず備前にもつかず。
ある意味自由な立場。客観的に人や物事を見れるんですよ。」
こだわりが、ないことはないんですが。 〜蕎麦 栂〜
NHK番組や雑誌の取材もよくあるみたいで、著名人が幾度となく訪れているそうです。
栂さん曰く、テレビはボーナスみたいなもので客足が増えるのは一週間二週間。
雑誌の方が長く効果がありますね、とのこと。いや、その分析は冷静で的確です。
お蕎麦を打つ栂さんは、もともとサラリーマンでした。
一日たりとも、辞めたいと思わない日はなかったそうです。
就職先はアパレル業界で、スーツを着たくないのになぜかスーツを売る仕事に行ってしまったとのこと笑
ちょうど就職氷河期で、どこか内定もらえれば入っておかなきゃ、みたいな風潮があったそうです。
サラリーマンをやめてフリーターをやりながら飲食にシフトしました。
そして蕎麦に出会いました。
大阪で3年半修行をして帰ってきました。
そしてギャラリー栂に併設して蕎麦屋を始めました。
淡々と出来事をお話されますが、この道のりが平たんでないことは、容易に想像できます。
修行先は、大阪の名店です。
師匠のことば
「百人が食べて、百人がおいしいということはあり得ない。そのうち30人が気に入って、残ってくれれば充分じゃないか。自分が食べておいしいと思う蕎麦を、多少は他の人もおいしいと思ってくれるに違いない。これが支えである。とにかく、蕎麦を食べてもらいたい。」
その教えがエッセンスになっているのでしょう。
栂さんは地に足がついており、ストイックな仕事をしていることがうかがえます。
私も例にもれず、師匠のことば通りOne of 30 に入りました。
「ギャラリー栂」は、2015年、「ギャラリー&蕎麦 栂」としてあらたに幕を切りました。
現在、建物は17歳。
お蕎麦は3歳です。
自然のまんま。美しいと思うじゃないですか。
サイクリングロードで言うと、ここはスタート地点付近になるので、サイクリストのお客の入りは案外少ないそうです。
でも、たとえば姫路にあるスポーツ自転車ショップさんは、ここロマン街道のサイクリングコースを道路の起伏がないし、地盤がしっかりしているとサイクリストに勧めているとか。
そしてそこに来店したお客さんに、このお蕎麦屋を紹介しているそうです。
栂さんのお蕎麦は、県をまたいで人気なのですね。
栂さん
「サイクリングロードにお店の看板が立てられたらいい。
小さいやつをね。町でやってくれないですかね笑
ロード側からだとここが店って分からないから。」
そのお話を受けて、そういえばサイクリングロードに何キロ地点、という看板を町が主体となってつくろうとしているという説明をしたところ、
哲子さんが
「せっかく自然豊かなのだから、景観を壊さずにお願いしたいですね。
何キロ地点などと出すのなら、ぜひ周りの風景と調和するようにやってほしい。
ここは鉄道跡なんだから。
つくられた景観は、おもしろくないですよ。
外国に行くと、広告や案内がない。自然のまんま。美しいと思うじゃないですか。
人工的なものがどんどん増えていくことは残念です。」
と、核心を突いたことをおっしゃっていました。
栂さん
「町も移住対応慣れてきましたよね、
しかしこれから受け入れていかなかったら町がつぶれますもんね。
和気町って20年後とかを見据えてなんか計画してるのかな。
ここ清水も、10年20年経ったら(家が)一気に空くと思う。」
空き家管理、人口転出、教育拡充、あらゆる分野で長期計画が必要ですね。
この町にもサイクルショップがぜひ欲しい、などなどたくさんの要望が出ました。
一口に和気町といっても、地区ごとに特性があり、課題もそれぞれに違うのですね。
そしてやっぱり感じることは、親子そろってこだわりにこだわってます。
基本情報
営業時間 | 蕎麦/11:30〜15:00(売り切れ次第終了) ギャラリー/10:00〜17:00 |
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定休日 | 月曜・第3日曜 |
駐車場 | 7台 |
座席数 | 16席 |
おすすめメニュー | ざるそば/鴨そば |
電話 | 0869-92-9817 |
住所 | 岡山県和気郡和気町清水288−1 |