江戸時代より受け継がれる、岡山県産のこんにゃく。佐伯蒟蒻有限会社

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黄金色に輝く田んぼの向こう側に佇むこんにゃく工場。
その背中に、また「和気らしさ」を見つけた気がしました。
昔懐かしいとか、じわんとあったかくなるとか、おふくろ元気かな、そんな言葉がついつい浮かんでくる趣きです。

和気町佐伯(さえき)という地域で、江戸時代より300年間受け継がれてきた「深い歴史のあるこんにゃく」を製造する佐伯蒟蒻さんをご紹介いたします。


左から、佐藤社長、社長の奥様、取材記者papue

日本のこんにゃくのルーツは、岡山県!!

こんにゃく芋を見たことがありますか? 箸から逃げたがるツルンとした触感と、ゴニゴニした食感からはおよそ想像がつきませんが、 ごっつりとずっしりと、ジャガイモの親ぶんみたいな芋からできているんです。


冷凍保存してある蒟蒻芋を見せていただきました。

時は数千年前の縄文時代。 こんにゃくは中国(朝鮮半島)より日本に伝わり、はじめは薬として扱われていました。 時代が進み品種改良され、日本でも食文化が主流となりますが、 現在ではこんにゃくのシェアは、9割!が群馬産です。私たちの口に入るほとんどのこんにゃくは群馬のものなのですね。

しかし、日本で一番はじめに伝来したのは実は岡山県だとか。そこから、和歌山、群馬と広がったそうです。 こんにゃく芋は寒暖差があり、水はけの良い高原が最も育てやすい。 緩斜面や火山灰の土壌が広がる群馬県は、湿気を嫌うこんにゃく栽培にとても適するそうです。 昔は全国各地で生産されていましたが、病気に弱かったり収穫までに数年かかったりする世話の焼ける親ぶんなので、次第に群馬県に一極集中して発展してきた背景があります。


佐伯蒟蒻さんの、こんにゃく畑(岡山県和気町)

そんなわけで現在においては、群馬県産以外のこんにゃくはものすごく珍しいのです。 ここ佐伯も例にもれず、昔はこんにゃくづくりの町だったそうです。 当時はたくさんの芋が採れたので、あちらこちらのお家で手作りこんにゃくをつくっていました。

そして採れた芋は高瀬舟で、要所へ運ばれていたそうです。活力ある人々で通りが賑わう江戸時代の世界。しかし時は経ち、一軒、また一軒とやめていったそうで、今では佐伯蒟蒻が残るのみ。

芋についても、うかがいました。 こんにゃく芋にも種類があるそうで、現在佐伯蒟蒻の取り扱いが多い品種は「みやままさり」。 何だか優雅で強そうな力士を想像します。 粘度があり、味が良いそうです。新しい品種なのですが、病気に強いこともあり作付けを増やしているとか。

もともと日本には、古くから栽培されていた「在来種」、「備中種」という種類があったのですが、お互いに似た性質だったので、掛け合せることでの品種改良が困難でした。さらに、芋の病気が流行るなどの環境の変化もありました。

そこで中国の「支那種」という種類を輸入し、より栽培しやすい品種を作ることに成功したそうです。 その結果、「みやままさり」の他にも「あかぎ大玉」「はるなくろ」というみやびな感じの品種が登場し、生産性の高いエリート芋たちのおかげで、今日の私たちの食卓は豊かになっているわけですね。 次の品種の命名は、和気に因んで「まろがきよ」(清麻呂公っぽい)とか「わけのふじ」なんてどうでしょうか。


代表取締役の佐藤 樹美雄 社長。やさしい眼差しで、熱く語ってくださいました。

話を戻して、こんにゃく芋自体はエグミがあり、とても食べられたものじゃないそうです。 先人はすりおろしてアルカリに中和することを閃いたそうなんですが、昔は凝固剤(水酸化カルシウム)なんてもちろんないから、木を焼いて、灰を作り、その灰汁を使っていました。

その時発生する強アルカリで固まるらしいのですが、昔の人の食への執念、凄まじいですよね。 食べられるもので命をつないできた代々。きっと味覚も研ぎ澄まされていたのでしょう。
飽食のこの現代の日本、先人の爪の垢でも煎じて・・・ しかしこんなに美味しいものを世に産み出していただいて、本当に。もぐもぐゴクリ。

人生はこんにゃく365日

さてそんな中で、享保5年(1720年)創業、8代目社長である佐藤さんは、昔からの伝統製法を受け継ぎ、丁寧に丁寧に作っています。 工場の入り口に下がっている提灯には、江戸時代から続く折れ松葉の紋章がくっきりと描かれています。

この提灯は、この町のこれまでと、そしてこれからをじっくと見つめているのでしょう。

入り口を開けると、こんにゃくの独特の香りが漂ってきます。 中には大きな釜や、大型の機械が所狭しと並んでいました。

こんにゃくの工場見学は、そう経験できるものではありません。
こんにゃく大好き人間には、とても興味深い体験でした。 芋を洗って、蒸して、擦って、練って、袋に詰めて、殺菌して・・・とほぼ全ての工程を機械がやります。 機械が全部やるのにも関わらず、工場は常に4〜5人体制。みなさん忙しそう。

工程を説明してくださる佐藤さんは、頭の横にも後ろにも目がありました。
私の間髪容れない質問に丁寧に解説いただきながらも、あれこれ機械の調整や動作確認などに気を配り、完成品の計量も怠らず、とにかくまあ動くこと。

一日に、世に出ていく商品数は約4000個。大切な商品のお世話を、毎日毎日目を離さずに完遂しているのでした。

機械は、工程の数だけあります。 芋を洗う機械、 芋をマッシュにして蒸す機械、撹拌する機械、

缶蒸しにする機械、 芋を糊状に混ぜる機械、 空気と絡めてフワフワにする機械、 フィルムから袋にし日付を刻印する機械、

熱消毒で殺菌する機械、

50mの流し釜で糸こんにゃくをつくる道、

糸こんにゃくを切断する機械、 毎日、総重量何千キロもの糊状になった蒟蒻芋たちが通るパイプたち、 ところてんを作るための機械、 まだまだ出てきます。 これだけの大型機械。点検、洗浄がさぞ大変なことでしょう。


ほとんどオートメーション化されているが、つくる商品によって工程がかなり異なるため、人の手による入念な チェックも欠かせない。

バラエティ豊かな商品に秘められた想い

さしみこんにゃく、唐辛子こんにゃく、カラフル玉こん、 こんにゃくラーメン!? 長い長い歴史の中で、数々のヒット商品を生み出してきました。 そしてこれからも、多くの新商品が続く気配です。

たとえば、佐伯のりんご園で育てている果実を使った、りんごゼリー(仮名)
地元の果物を使ったデザート系こんにゃくの商品化に向けて奮闘されていらっしゃいます。
他にも町内のぶどう農家さんや町営のすもも園とコラボしてピオーネ、すもも、 などもシリーズ化できたら、とワクワクなお話が聞けました。

ところで佐藤さんは製造だけではなく、芋の栽培にも力を入れていらっしゃいます。 持ち前の体力で、社長自ら畑に入ります。 昔から地元産への思いはあったそうで、今後も種類を増やしていきたい、というモチベーションです。

今は、生いも蒟蒻8種類が全て和気町産だけれど、精粉の製品は群馬産です。 粉も岡山産にできないものかと練っている段階だそうです。 精粉の製品は、1キロの粉をつくるのに10キロの芋が必要だとか。

せっかく育てたお芋たちが十分の一に凝縮されるのかと、気が遠くなります。 佐伯蒟蒻は地元ファンが多く、岡山県産に競合はいません。

だってだって、おいしいですもん。 もし全国的にやるとしたら生産量を増やさないといけませんが、 ネットで買えるようになったら、さらに販路が広がるんだろうなぁと勝手に妄想しております!

岡山産のこんにゃく製造にこだわり、自社栽培するというそのひたむきさ。 食トレンドの移り変わりが激しいこの現代において、継続は容易なことではないと思います。

栽培から始まり製造して販売して開発して…これを死ぬまで続けるというご苦労と忍耐は、いかなるものでありましょう。
毎日の仕事量と社長のこんにゃくへの想い、地元佐伯町への献身を想像し、私はこれから、こんにゃくをよく噛むことにしました。

見て美味しい、知って美味しい、アツアツこんにゃく、今夜食う?

取材の日は(これでも)比較的工程が楽な角コンニャク製造の日に合わせて、入室OKをいただきました。
角コンニャクの出来たて、ホカホカを想像してみてください。 袋から頭を出して、しょう油とカラシをちょんちょんして、そのままかぶりつく。 新感覚のおやつとでもいいましょうか。 これはね、ほんとに食べてみてほしいです。

町内のみなさま、朗報です。 工場に直接買いに行くのもオッケーだそうです!!やったー!ようこそ新しい世界へ。 (出来たて角コンニャクを狙う場合は、製造予定日を事前にお電話にてご確認ください。) 奥さまにもお話をうかがえました。 文字通り、身をこんにゃく・・・もとい粉にして働く毎日です。

ところてん&寒天ブームの時は、完全に夜なべしました。 あちこちで欠品が相つぎ、天草(ところてんと寒天の原料)がなくなる事態で、こわいくらいに電話が殺到したそうです。

そういえば、ありましたね。10年以上前でしょうか、某テレビ番組で、寒天ダイエットを紹介したところ、あっという間にブームに火がつき、スーパーから忽然と寒天たちが姿を消す、という怪奇現象。テレビの力が絶大な時代でしたね。

記者は「健康」とか「ダイエット」などのキーワードは敬遠しがちですが、ところてんのおいしさについては、何時間か語れます。 大ブレイクした時は、日本人あるあるの光景に腹がたちましたねー。 まったく、いっときのパッションで買い占めよってからに、己のところてん愛はいかほどにあるのか。

勤勉で穏やかな社長ご夫妻とご一緒させていただいたのは短い時間ではありました。 が、創業300年を背負う秘めたる炎と言いましょうか、和気町に合併する前からの「旧佐伯町」への愛があり、プライドがあり、覚悟があるようにお見受けいたしました。 このお二人もまた、「和気町」をつくり、「良き和気町」を導いている方たちなのだなぁと頭が下がります。

和気町の学校給食で出るこんにゃくは、全て佐伯蒟蒻のものです。 和気の給食環境は大変恵まれています。
できるだけ地元のものを使い、メニューも豊富です。手作りおやつが出ることも少なくありません。
園児や生徒たちはご近所の農家さん協力のもと収穫体験をさせてもらったり、給食の時間には食材を提供する農家さんご本人が来て、野菜についてお話を聞いたり、と生産者と触れ合う機会も多いのです。 それも理由なのか、何でもおいしくしっかり食べる子が圧倒的に多いです。

岡山県には地産地消月間というのが毎年あります。 6月と11月にあたるのですが、指定工場になっている企業さんは、県下の給食センターに提供するのに大忙し。 佐藤さんもこの時期はお休みは返上して、こんにゃくを供給し続けます。
みなさま、どうか体を壊されないように。

こんにゃくは「砂おろし」と言われ、体の中の悪いものを出す作用があるそうです。 いわゆるアレルギーは皆無だとか!まさに自然界のありがたいお薬ですね。 様々な環境が起因して、人々の「食」に対する意識もじわじわと変化していくことでしょう。
時代が、佐伯蒟蒻に追いつくことはそう遠くない未来だと予感します。

佐藤社長にインタビュー

ー 和気の魅力って何でしょう。

僕は田舎もんなんでね、自然がいいよ。 近所づきあいが盛んでね、あったかい感じ。 人の良さかな。

ー これから移住をする方に、仕事はありませんか?

作付けの募集かな。 自分でするには大変だから、りんご園の近くにある畑で、だれかやってくんないかなぁ。 新規就農でも興味があれば、来てほしいです。

ー 趣味特技など教えてください。

休日の過ごし方・・・最近ないですね笑 空手かな。
あと海釣りにはよく行ってました。 でも最近、ここ2年は行ってないなぁ。 芋の栽培で忙しくて休み全部持ってかれた。 GWに植え付けやってますよ。 自社栽培の他に、和気の畑で数人が作って提供してくれています。

ー 畑の作業は大変ですよね。

学生時代はバスケ部(バスケットボール部)だったからね。 畑に行って土いじると、気分転換になる。 栽培は手間がかかるからしんどいけど、まぁ楽しいかな。 いい芋できたら、嬉しいよね。

ー 和気のおすすめスポットは?

片鉄ロマン街道。 旧天瀬駅の桜。 天神山トンネル周辺。 旧佐伯町のファミリーパーク(リンゴ園)。あそこは大きい風車があってね(現在工事中) そこで、秋のりんご祭りがあるよ。

三保高原について、詳しくはこちら
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ー 最後に一言!

江戸時代享保年間創業の企業です。昔ながらのおいしさを皆さまに。 ぜひ一度、岡山県和気町にいらしてください。

昔は、春に黒姫祭りというアットホームなお祭りもあったそうですが、 現在は秋に行われるりんご祭りに集約されて、毎年多くの人で賑わっています。 どうかこの佐伯が、変わらぬ佐伯であり続けますように。 そして、来年のりんご祭りでは、会場のあちこちで佐伯蒟蒻のりんごゼリーを堪能している来訪客の姿を想像して取材を終わります。

基本情報・アクセス

事業所名 佐伯蒟蒻有限会社
業種 こんにゃく製品製造
営業時間 8:00-18:00
定休日 日曜日
主要商品 生芋こんにゃく(8種)、こんにゃくラーメン(3種)、さしみこんにゃく(2種)
注文方法 電話、FAX
電話 0869-88-1123
FAX 0869-88-1124
住所 岡山県和気郡和気町佐伯100−1

 店舗までのルート検索

佐伯蒟蒻のホームページはこちらです。
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