来てくれた人に、美味しいものを、食べてほしい。おやじの台所

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目で味わい、舌で味わい

プリップリの刺身にカラフルなたくさんの小鉢!品数もさることながら、一品一品に真心が入っていることが伝わって来ました。
野菜や魚など食材は地場のものをなるべく使うそうです。

脂がのった厚切りのサーモン。たまりませんね。
このランチ、価格は適正なのか?東京だったら間違いなくもっと高いだろうに…と
余計な心配をしてしまいます。

どのへんがおやじなのか

「来てくれた人に、美味しいものを、食べてほしい。
その思いだけでやっています。
儲けなんてない。
自分の小さな子どもも食わせていかにゃならん。
だけど自分のポリシーは崩さない。いや、崩したくない。」

大将のおやじ、こと原さんは、ひとりで全部やります。
ひとりで全部やるっていうのは、読んで字のごとく全部なんですが、経営から料理から敷地内のことを、くどいようですが本当に何もかもぜーんぶひとりでやるんです。

お店の引き戸をガラッと開けて入ると、まず感じるのはクリーンな店内。
ずらりと整列されたボトルキープのお酒たち。銘柄が全てこっちを見ています。
ピカピカのテーブルや椅子。清潔感あるお座敷。
目一杯に積まれている色とりどりのツヤツヤな小皿たち。

こぎれいに、丁寧に、お店づくりをしていることがうかがえます。
ランチも夜も営業しており、聞けばやはり、定休日だって朝からお店で仕込みや掃除をしています。
大将にはお休みなんてないんです。

こじんまりとして、でも狭すぎない客席は、大将との距離感に心地よく
カウンターに座ると行きつけのお店に来たような居心地の良さを感じます。

そして目に飛び込んで来るのは、鮮度バツグンのお魚の切り身が並んでいるネタケース。
庶民派定食屋のイメージで入ったらあら、お寿司屋さん?
小料理屋さんだったのかしら、というギャップです。価格帯はどれもリーズナブル!いや〜うれしいですね。

原さんは、東京は銀座、目黒、と名だたる一等地で寿司を握っていたとか!
地元が岡山だったので、時を熟して戻られたそうです。
そんな経緯もあり、ここのお店を構えるにあたり店名はせっかくなので、割烹とか活とか、格式高い漢字を使用したいと検討していました。
そして奥さんからバッサリ。「そんなのは、おえん(ダメだ)。」
来てくれるのは地元の人たち。
日常使いできるお店こそ、必要とされるよ、という奥さんの的確すぎる助け舟があったそうです。
店名をおやじにして良かったと、おやじはしみじみ腕組みをしながら言いました。

おえんおえん(だめだだめだ)から始まった店づくり

原さんは東京生活が長かったので、街の文化をとてもよく知っています。
そして町民のニーズをよく知る強力なマーケターである奥さまのおかげもあり、ここ地元の常識も兼ね備えています。そんなわけで、もうお店の切り盛りは恐いものなしですね。
と思ったら、恐いもの、ありましたありました。

お店があるこの場所は、もともと奥さまのお父様の土地だったそうです。
ここに店を構えたいと考えた原さんはお義父さんに相談するも、開口一番「帰れこのやろー。ばかたれー」を浴びます。
お義父さんにそれはもう、何度も頭を下げました。土下座だってしました。

普段はそんなこと言うお義父さんではないそうなのですが、ここ和気で飲食をやるということについては断固反対。
一切の理解を得られず、了承をもらうのに長い月日が必要となったのでした。
諦めない原さんのまっすぐな思いに、お義母さんが味方となり、奥さまにも口説いてもらい、
やっとの事で、店舗兼自宅を作るという次のステップに。
しかし今度は、建築関連のお仕事をされているお義父さんのお眼鏡に叶う店舗づくりに、悪戦苦闘。
原さんは図面を引き引き、相談に行っては「冗談じゃない。ボケー!そんなんは、おえーーーーん!!」と罵倒され、何時間もかかった図面をいちから引き直し…という調子。
建設作業もなんと自らも!?入ったりして、やることなすこと、まあ叱られたそうです。文字通りこてんぱん。
本当に大変だったみたいです。
この素敵な空間は、血と汗と涙の結晶なのでした。
でも、原さんの真摯な態度と本気の姿勢にお義父さんもいつしか折れて、協力してくれるようになったそう。
もしかしたらこのお店のオープンに一番喜んだのはほかでもなく、お義父さんだったのかもしれません。

家でもおやじは台所

保育園から帰ってきた娘ちゃんが、「おとうちゃーん」とお店にじゃれこんで、
嗚呼かわいいかな、仕事捗らず。

かわいい我が子のお父さんもしたいし、仕事もきちんとしたいし、葛藤の毎日です。
まだヨチヨチ歩きの娘さんに与える食事は、原さん自らが用意します。
さすがはおやじ、食にはこだわりたいので奥さんには任せられないとのこと。
どうやら自宅の台所もご自身のテリトリーのもようです。(…うらやましい。台所の取り合いとかしてみたいものです。)
おかげで、愛娘さんはこの店の漬物が世界で一番好きとか。(…その一言、私も言われたいです。)
お野菜なんでも食べるというからすばらしい。(…一家に一台、原さんを希望。)

 

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お客さんにとって快適で美味しいお店というのは、店主の日々のそれはそれは細かな労と、
ぶれない理念がつくりだすのかもしれませんね。

お昼は定食!夜はお酒!夜でも定食ももちろん食べられます。お肉のメニューもあります!染みる〜。

ご飯屋としても、飲み屋としても、
接待の場としても、いろいろな使い方ができそうです。

婦人もおやじも沸かす店

原さん:
おばちゃんがね、すごいんですよ。
口コミで広げてくれるのは助かるんだけどね、あることないこと、まぁすごい(笑)
「予約しないと入れんのよー
それもいつもいっぱいでねー ここのご飯はね、食べるの難しいわよ。」
…なんてね。口コミしてくれるんですわ。いやいやぜんっぜんひまな日もあるわ。
予約なしでもウェルカムなのにね。あんまり言うから風評被害ですわ(笑)

こんなこともありました。
やっとの思いで、子ども部屋を作るので、お店の隣が自分の家なんですけどね、増築したんです。
そしたら、またおばちゃんたち。
「あんた、宴会場できたって聞きましたよ〜。いやー儲けとりますなー。」
それでね、やれここのドアから宴会場につながってるだとかね、やれ酒ダルの脇に回転扉のボタンがあるんだとかね、もう止められないですわ。子ども部屋だっちゅーのに。

そんなんで、ご婦人の意見は話半分にしといてます。
「おいしかったよー。また来るねー!友達連れて来るわー!」
なんやかんや期待させること言って、友達どころか、いっこうにこないから(笑)
それより、口数の少ないサラリーマンやおっちゃんたちのほうが、
「ん。うまかったよ大将」って一言だけ置いて帰るんだけどね、
また来てくれたりするんですわ。

(ガラッと引き戸が開いて、お客のおばちゃん登場)
あ、すんません、今日は営業ないんですー。

(おばちゃん帰ってから)
営業中とかお休み中とか看板あっても、お店に入ってきちゃうことも少なくないんです(笑)
まけたわー。

…ま、そういう店いうことです。

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こんなオチ付き話が、延々と繰り出されるわけで、取材中、終始ケタケタ笑ってしまいましたが、さいごに、大将から聞けた全ての道に通ずるであろうこの言葉を。

「当たり前のことを、毎日やり続ける。」

深い深い、ことばです。

おやじ、ありがとうございました。

(写真は「お休み中」だった看板を「営業中」に変えて撮影しました。

基本情報

営業時間 11:30-売り切れ次第/17:30-魚がなくなり次第 ※祝日は昼営業なし
定休日 日曜、月曜
駐車場 10台
座席数 30席(カウンター、座敷あり)
おすすめメニュー 昼:和定食/刺身定食/日替りランチ 夜:刺身/さっぱりチャーハン/だし卵焼き/長芋のシャキシャキ
電話 0869-93-3363
住所

岡山県和気郡和気町福富636ー4

 お店までのルート

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